今月の法話

平成29年5月

お念仏の花

今年は例年より全国的に桜の開花が遅かったようです。
私の住む九州より東京の開花が早くびっくりしました。

桜は春を告げる花。暖かい日が続く長さなどの気象条件の影響を受けるのですが、実は冬の寒さも大事な条件の一つなのです。桜は春の花が散ったのち、夏から秋にかけて気温の高いうちに花芽(生長すると花となる芽)を作ります。
冬が始まると休眠に入り、生長は一旦止まりますが、さらに気温が下がり、真冬になると、厳しい寒さが目覚ましとなり、それから気温が上がるにつれて一気に生長し、つぼみがふくらんで花が咲きます。つまり桜は一定期間のつらい厳しい寒さがなければ花は咲かないのです。

これは私達人間も同じだと思います。ただ暖かい順風満帆の人生では香り高い人格の花は咲かないでしょう。苦しみ悲しみの厳しい寒さを経験し、そして阿弥陀仏の光明に照らされてこそ、香り高い人格の花が咲くのです。

桜の故事ことわざに、
「桜は花に顕れる」という句があります。
(他の雑木に交(まじ)って目立たなかった桜の木も、花が咲いて初めて桜の木だと気付かれる)

私達は自力で悟れるような力はありません。厳しい修行で智慧を極める力もない凡夫です。

苦しさ悲しさの生活の中でも阿弥陀様を信じ、念仏の生活を続けるのです。必ず念仏信仰はこの私の人格を高め、仏の光明に照らされ香り高い人へとお導き、お育てをうける事です。

人生は時に厳しい寒い風が吹き、冷たい霜が降りる日もあります。けれどもそれは自分の心を練って下さるものと頂戴すれば感謝する事もできるでしょう。

ともにお念仏の花を咲かせましょう。

合掌

長崎 法樹寺
大西文生

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