今月の法話
平成29年11月
お念仏という希望
法然上人のお父様、漆間時国公が明石定明によって夜襲を受けられ、まだ九つでいらした法然上人が仇討ちを誓おうとされた時、時国公はこう仰いました。
「仇を討てば恨みは尽きないだろう。それよりも私の菩提を弔い、自らも仏の道を求めなさい。」
正しい道はただ仏の道のみである、とお示しになられたのです。
平成27年11月、フランスでテロがあり130人以上の方が亡くなられましたが、そのテロによって奥様を亡くされたある方が、インターネット上にこう書かれました。
「テロリストたちに『憎しみ』という贈り物は贈らない。彼らと同じにはならない。」
「妻はいつも僕たちと共にいて、再び巡り合うだろう。」
憎しみに打ち勝つ力。それは希望です。
法然上人は、お念仏によって極楽浄土で大切な方々と、正しい道を示されたお父様の時国公はもちろん、お母様にも、そして縁あって共にお念仏を申されたすべての方々とも「再び巡り合える」ことをお示しくださいました。
憎しみではなく人々に対する慈悲を力とされ、復讐ではなく極楽浄土での再会を希望とされた法然上人のお姿を仰ぎ、私たちもまた大切な方々と、法然上人とも出会える希望のうちに、お念仏に励んでまいりましょう。
「倶会一処悦び勇むお念仏」
合掌
大阪 清伝寺
宮川孝明