今月の法話
平成30年6月
極楽も かくやあるらん
法然上人は、御年75歳の時、お弟子の罪咎を背負われ、四国へ流罪の身の上となられました。讃岐の国、今の香川県へ赴かれたのですが、京都をお発ちになり十日後、讃岐の塩飽島(しあくじま)に到着され、その土地の地頭、高階入堂西忍(たかしなにゅうどう・さいにん)の屋敷にお世話になることになりました。
高階入堂は、前日の夜、十五夜の月がキラキラと輝きながら、自分の衣の袖に入る夢を見て、不思議だなと思っていたところ、京都からあの法然上人が、自分たちの島にお越しになられた。きっとこのことをお告げ下さったものだと喜び、薬湯を準備し上人の寒さと疲れを癒し、村人たちも心からのご供養をささげたのでした。
法然上人は有難さの余り、その喜びの心を
「極楽も かくやあるらん あら楽し
はや参らばや 南無阿弥陀仏」
(皆様の心からのおもてなし、誠に極楽に来たような、心なごみ、嬉しい楽しい気持ちでいっぱいです。
まさしくこのようなお浄土へ益々参りたく思います、南無阿弥陀仏。)とお詠みになられました。
人様の優しさ、心づかいのあたたかさ、或いは美しい風景に接した時、この世においてさえこのようであるならば、阿弥陀さまのお浄土はどれほどあたたかく、美しく、喜びに満ち溢れているのだろうか。
私たちも、そう想いを馳せてみるならば、ますます極楽が慕わしく、力強いお念仏が申せるのではないでしょうか。
合掌
北海道第一 長昌寺
麻上昌幸