今月の法話

平成30年7月

み名を称えれば必ず生まる

今年3月、東日本大震災7年目を前にNHK朝のニュース番組で「大切な人と夢で再会、変わる遺族の心」と題してのレポートがありました。宮城県山元町に住む男性(47歳)が、妻と娘(1歳次女)を震災で亡くされた直後から、『夢日記』なるものを書き続けているという内容です。

『夢日記』は、火葬の日の夜から始まります。その夢の中の二人の顔はハッキリと見えず、言葉もありませんでした。「あ―これで二度と会えないのか、これでお別れか。」と苦しい辛い気持ちが書き込まれました。ところが、その後徐々に夢は変わっていき、1年が経つ頃には娘のおむつを替える夢を見たり、妻と手を繋ぐ夢が書き込まれるようになりました。その頃から、二人がいつも見護ってくれていると感じるようになったと言います。
5年経ったある日の夢では、妻がすぐそばで「何もしてあげられないね。でも、信頼してる。急がないから。待ってるから。」と話しかけるようになりました。「信頼してる、待ってると、はっきり言ってくれた。離れているんだけれど、強いメッセージだった。」とその時の気持ちが綴られました。今も『夢日記』は書き続けられています。

昨年9月、男性は遺族たちが語り合える遺族サロンをオ―プンしました。大切な人との思い出や、見た夢をお互いが話せる場所が必要と考えてのことでした。番組の中、「このサロンは、妻や娘に背中を押されて始めました。今を強く生き続けようという決心に繋がりました。
そして、今でも妻と娘と一緒に生きているんだと感じるんです。最近は娘と一緒に風呂に入っている夢を見ました。この世では、やれる事をやって、いつの日か再会することを希望にして生きていきます。」とレポートは締めくくられていました。

夢を通して励まされ、亡き人と一緒に暮らしながら今日を生きる、その決心の先には大切な人との再会を願う姿がありました。大切な方を亡くされた人にとって、「また会いたい」と湧き起こる心が日に日に強くなっていくのは当然のことであります。

阿弥陀さまのお約束の中に「心から信じ願って、私の極楽浄土に生まれたいと望んでお念仏を称えたならば、必ず救い摂るぞ。」とお誓いがございます。法然上人さまは「阿弥陀さまは一度お念仏すれば一度の往生を割り当てくださるお約束をなさったのですから、お念仏するたびにそれが往生のための行いとなるのです。」とお示し下されました。

ですから、お念仏する私たちには往き先がございます。大切な方々が待って居られる極楽浄土にまいります。十人いれば十人が百人いれば百人が、そこで大切な方との再会を果たします。お念仏の中の生活は、大切な方々との再会の絆を一層深めるのであります。

合掌

山形 専念寺
佐藤康正

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