今月の法話

平成30年9月

豊かに生きるために

8月(地域によっては7月)はお盆、9月はお彼岸、その後はお十夜と夏から年末にかけては仏教行事が続きます。

今月はお彼岸ですが、お彼岸には春はぼた餅、秋にはおはぎをお供えします。名前は違っていても同じものです。ぼた餅は牡丹の季節(春彼岸)に食べるものの事で、あずきの粒を、その季節に咲く牡丹に見立てたものなのです。そしておはぎは萩の季節(秋彼岸)に食べるものの事で、あずきの粒を、その季節に咲く萩に見立てたものなのです。

昔は一部の方を除き、毎日白いお米の御飯を食べるということは出来ませんでした。そんな時代に一番の御馳走は、当時、大変貴重な砂糖を使ったぼた餅、おはぎでした。

その大切なものを仏様や御先祖様にお供えさせて頂くのです。要は自分が望むもの、大切なものを施しする心が尊いのです。

私達が持っている欲の心、貪りの心を「布施」させて頂くことで取り去り、お陰様と手を合わせることが出来る清い心にならせて頂くのです。

ある心理学者の言葉に「たくさん持っている人が豊かな人ではなく、たくさん与える人が豊かな人である。何かを失うのではないかと心配して思い煩っている貯蓄型の人は、心理学的に言えば、どんなにたくさんのものを持っていようとも貧しい人なのである」とあります。たくさん与える人が豊かな人で、持っているのに与えない人は貧しい人である、というのは真理です。しかし、頭ではわかっていても、なかなか実行の出来ない私たちです。

人間は欲の心、腹立ちの心、愚かな心という三つの心を皆持っています。これを貪欲、瞋恚、愚痴の三毒煩悩と言います。三毒煩悩に振り回されるが故に、与えることが出来なかったり、苦しみや悲しみや憂いが生じてしまうのです。

お経には「消除三垢冥 広済衆厄難」とあります。お念仏を称えることによって三垢の冥(三毒煩悩の事)を消し除いて、広く衆の厄難から済われると言うのです。

私たちは三毒煩悩が強く、迷ってばかりです。お念仏を称えることにより阿弥陀様のお力で少しずつでも三毒煩悩を消して頂き、尊い日暮らしが出来るようになってくるのです。
お念仏に励んで豊かな人生を目指しましょう。

合掌

京都 天然寺
城平賢宏

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