今月の法話

令和元年12月

めでたい事

私が勤める養命寺で以前ある奥様、水子供養の申し込みがありました。「十年前の水子ですが大丈夫でしょうか?」と、心配そうな声でした。
私は即座に「供養したいという今の思いが大切です。いつでもお待ちしています。」と答え、法要を勤める事となりました。

法要の中で、阿弥陀様は私達の命の行く先を、苦しみの世界を離れた極楽浄土へとちゃんとお迎え下さる事。阿弥陀様は赤ちゃんもお母さんも守りたいと願って下さる優しい仏様だから、浄土での再会を願って一緒にお念仏を称えましょう。とお伝えし、共に「南無阿弥陀仏」とお念仏を何度もお称えしました。

涙を流しながらお念仏を称えるお母さんが、法要の最後にお声掛けをくださいました。「十年間ずっと涙の生活でした。取り戻すことの出来ない過去を思い続け、赤ちゃんの場所も判らなく、頼る教えも判らなかった。判らない事だらけで下を向く十年でした。でも今日ここに来て、手を合わせる仏様を知り、赤ちゃんの行く先も判りました。現実は何も変わらないけれど、下を向かずに涙を流せそうです。悲しい中でちょっとだけ幸せを貰いました。有難う御座います。また来ます。」涙を流しニッコリと微笑んで下さいました。

そのお母さんのお姿を見て、改めて私は当たり前のように阿弥陀様の存在を知り、お念仏を称える大切さを知っている事の喜びを感じました。悲しみに涙を流す私に、お釈迦様は教えを残し、阿弥陀様は救いを約束して下さいました。

新年を迎えるのはめでたい事ですが、阿弥陀様に出会う事もまためでたい事です。掛け替えのない宝と思って、阿弥陀様に毎日手を合わせお念仏をお称え下さい。

南無阿弥陀仏

静岡 養命寺
安井隆秀

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