今月の法話
令和2年3月
やさしい光で周りを照らす蝋燭の灯をみているとホッとする方も多いのではないでしょうか?蝋燭は自分の身を削りながら、周りを明るく照らしています。
昨年往生されたお婆さん、ご長寿でありました。103歳の大往生。足腰が弱くなってからもお寺が近くということもあり山門までよくリハビリを兼ねて息子さんに手を取られながらゆっくりと散歩されていらっしゃいました。山門まで来ると本堂に向かって頭を下げて帰って行かれる。会うといつもニコニコと笑顔を見せて、私にも深々と頭をさげて下さいました。日頃からお婆さんに私はいつもお徳をいただいておりました。そんなお婆さん、往生される103歳まで見事に自分の歯、虫歯も無し。日々の三度の食事を常として、それ以外の間食はまったくせず、食事が済めばきっちりと歯を磨く。それを生涯しっかりと続けてらっしゃいました、それからお念仏。枕経の席でのお話でお仏壇の前はもちろんのこと生活の中でお念仏を良くとなえていたなぁと家族みんなでしみじみとお話くださいました。お別れは悲しいけれど「おばあちゃん有難う」と気持ち良く送らせていただきました。決めた事はきっちりやる芯のあるお婆さん、そしていつもニコニコそのお姿は蝋燭のようなお人柄のお婆さんでありました。
お婆さんが亡くなった後も、その家の前を通るとお婆さんの生前と変わらず木魚の弾む音が響いています。残されたご家族のどなたかが念仏を唱えて下さっているのです。それは日頃からお婆さんが明るく灯して下さったお念仏の光でもあります。お念仏のご縁をいただく私達は、そのようなお人柄となれるよう心がけたいものです。
合掌
奈良 浄土寺
藤田宏至