今月の法話
どんなときでもお念仏を
世界中に広がった新型コロナウィルスが私たち人類を脅かし始めて数ヶ月が経ちます。収束の目処がつくどころか事態はますます悪くなる一方です。
総本山知恩院をはじめ全国の浄土宗各寺院も法要や行事などを中止せざるを得なくなりました。
しかし、こんな時だからこそ仏さまにしっかりと心を向けることが大事なのではないでしょうか
この非常事態にそんな悠長な、という声があるかも知れません。けれども、仏教のみならず宗教というのは、現実と向き合うと同時に、そこ超えたところから私たちを優しく包み込んでくれるものでもあります。
私たちお念仏を信仰する者は、南無阿弥陀仏とお念仏を称え、いのち終わった暁には阿弥陀さまのもと、極楽浄土へ生まれさせていただくことが本旨です。
今、このウィルス騒動が一刻も早く収束するように願ってお念仏するのは本旨から外れることですが、それもまた有りだと思います。
知恩院から北に3キロほど行くと百万遍知恩寺という浄土宗の大本山があります。この「百万遍」の由来は、元弘元年(1331)京の都に疫病が大流行した折りに、空円上人というお方が後醍醐天皇の勅命により御所の紫宸殿に7日間籠もってお念仏を百万遍称えたところ、疫病が治まったことから、後醍醐天皇より百万遍と云う寺号を賜ったところからだと伝わります。ですから今、私たちは自分自身の極楽往生を願いつつも、あわせてこの苦境を乗り越えられるようにお念仏を称え続けることも大切なのではないでしょうか
ウィルス感染拡大に歯止めがかかるよう、現実問題として一人一人が意識を持って行動し、そしてどんな時にも信仰の心を忘れない、お念仏を称えることを忘れない私たちでありたいものです。
法然上人が、「共行して申されずば、一人籠居して申すべし」というお言葉を遺しておられます。外出自粛、人との接触をなるべく避けなければならなくなった今でも、お念仏の声が絶えない世であることを切に願います。
合掌
福岡 円宗寺
能登原靖史