今月の法話
令和3年3月
お念佛で煩悩を消す
檀家さんでよく「おおきに、おおきに」とおっしゃるおばあさんがいました。毎月のお参りでも約束した時間に行くと「まあ時間きっちりに来てくれはって、おおきに、おおきに」と毎回言われました。
このおばあさんは若い頃から法話を聴くのが好きで、五重相伝も受けておられます。よくお念佛を申され、いつもニコニコしていらっしゃいました。
お仕事は農業をしておられ、お寺を始め、ご近所にも野菜などをよくお裾分けしておられました。そして人から何かしてもらうと「おおきに、おおきに」と何度もお礼をおっしゃっていました。
幸せだから感謝するのではなく 感謝するから幸せになれる
この言葉のような方でしたが、ある時、癌が見つかりました。手術をされ、主治医の先生から余命は5年位と言われたそうです。その事を住職である私に報告された後、「そんな事ですので御住職には5年後、お世話になります」とニコニコしながら合掌して言われました。
それから11年生きられ89歳で御往生なさいました。回りの方々から大切にされ、亡くなられてからも「あんな良い人はなかなかおらんねえ」と口々に言われました。
長いお付き合いでしたが、愚痴を聞いたことが一度もなく、いつも感謝の言葉で溢れていました。
私達には三毒煩悩(貪り・怒り・愚かさ)があるが故に、ついつい欲や愚痴が多くなりがちですが、お念佛をお称えしますと「消除三垢冥(しょうじょさんくみょう)」(三垢<貪り・怒り・愚かさ>の冥(やみ)を消し除く)とあるように、三毒煩悩が消し除かれて、心穏やかな日暮らしが出来ていくのです。日々お念佛生活に励みましょう。
合掌
京都 天然寺
城平賢宏