今月の法話
令和3年6月
法然さまのお譬え
法然上人が『三部経大意』という御説法の中で示されているお話です。
『昔、中国の漢の時代に、たいへん厳しい戒の修行を行っていた玄通律師という方がいて、ある修行の旅の晩、野宿することになりました。すると近くにもう一人、野宿の僧が「其佛本願力 聞名欲往生 皆悉倒彼国 自致不退転」というわずか二十文字のお経の一節を何度も小声で口にしています。
律師はそれを聞きながら一晩をすごし、その後、この経文を思い出すこともなく、とうとう忘れてしまいます。
後にこの律師、戒を破ってしまい、閻魔の庁へ赴く羽目になってしまいます。
閻魔さまは「あなたは人の世に生まれ、仏の教えを聞いているはずだ。覚えている教え、言葉があるなら、申し述べてみなさい」と。
怖さと緊張のためか全くなにも思い浮かびません。そんな時、あの野宿の僧の声がパッと想い起され「其佛本願力…」と思わず口から発しました。すると閻魔さまは驚き、「それは西方浄土の阿弥陀さまの功徳を説く御文ではありませんか」。
閻魔さまは大王の冠をはずして自ら礼拝をし、律師はお浄土に救われたのでした。』
優しく譬えをもって説かれる法然上人のお人柄が偲ばれます。お浄土のお経の功徳もこの通り、それにも益して阿弥陀さまのお名前・お念仏はこの上ない功徳と説かれます。お念仏申して参りましょう。
北海道 長昌寺
麻上昌幸